それは突然のことでした。
会社の駐車場でいつものようにセリカさんに乗り込み、クラッチを踏んだ瞬間、違和感に気づきました。クラッチがやけに軽い。いつもの半分以下の位置で抵抗を感じます。
違和感を抱えながらギヤを1速に入れるも入りが悪い。「気のせいであってくれ……」と祈りながら走り出しましたが、どう考えても気のせいではありませんでした。お迎え後初めて訪れた、セリカさんの体調不良です。

緊急診察:出血を確認
ボンネットを開けてリザーバタンクの残量を確認すると、空になっています。

室内からマスターシリンダーを確認すると、ロッドを伝ってクラッチフルードが滴っていました。出血です。大量ではありませんが、じわじわと、しかし確実に出血していたようです。いつからこんな状態だったのか……。ごめんね、セリカさん……。

まずは輸血を試みます。クラッチフルードを補充してみましたが、すでにラインの一部からもフルードが抜けてしまっているようで、タッチは回復しませんでした。エア抜きをして補充しながら騙し騙し走らせることもできますが、常に出血している状態では気が気ではありません。セリカさんのQOLを考えると根本的な処置が必要です。

診断確定:既往歴の確認
主治医の寿自動車整備工場・石川指導医に相談すると既往歴を確認してくれました。自分でもカルテ(整備記録)を確認しましたが、クラッチラインの交換歴はありませんでした。
昭和62年生まれのセリカさん。39年間、一度も交換されることなく頑張り続けたマスターシリンダーですが、ついに限界に達したようです。
幸いなことに、石川指導医の手元にはマスターシリンダー・ホース・レリーズシリンダーの新品在庫があるとのこと。(ホースは廃盤なので代替品)さっそく送ってもらうことにしました。ドナー臓器の確保完了です。
転院先と搬送ルートの確保
次は手術をしてもらう病院探しです。千葉にもGRガレージがあり、症状を説明すると受け入れ可能とのこと。ただし現時点で木曜日、受け入れ可能なのは週明けからとのことでしたが、こればかりは仕方がありません。週明けを目標に準備を進めます。
続いて搬送方法の確認。あいおいニッセイ同和損保はロードサービスが無制限のため、GRガレージまでの搬送は問題なし。ただし気になるのは、万が一GRガレージで手に負えず、再度の転院が必要になった場合の二次搬送です。保険会社によっては対応していないケースもあるようですが、あいおいさんは二次搬送もOKとのこと。万が一の際は、主治医である寿自動車整備に搬送することもできます。さすがあいおいさん頼りになります。
悪魔のささやき?
近所に住むAE86乗りの友人にセリカさんの状態をLINEで知らせると即着信がありました。
「みときちさんならできますよ、私も手伝いますし。」
悪魔のささやきでした。
確かに、GPz900R(Ninja)はエンジン本体以外のメンテナンスはすべて自分でやってきました。ブレーキや油圧クラッチのエア抜きも一人でこなしてきた。でもどうも車は苦手なんですよ。何が苦手って、内装などをバキバキ言わせながら外すのが壊してしまいそうで怖いのです。
とはいえ助手まで買って出てくれているし、この先も交換で済むような治療は自分でできるようになっておいた方がいい。そう思い直し、自らセリカさんを執刀することを決めました。
自分で執刀することを主治医に伝えると、「午前中なら電話に出られますので、困ったらサポートいたします」と心強い言葉もいただきました。
「セリカさん待っていてください。必ず治します。」
→ 後編へ続く:手術当日、朝から気合いを入れて臨んだ執刀医を待ち受けていたのは、想定外の難関の連続だった——



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