時刻は12:00を過ぎていました。
マスターシリンダーの摘出だけでここまで時間がかかってしまった。本来はクラッチホースとレリーズシリンダーも同時交換する予定でしたが、このペースで続けると暗くなってしまう可能性があります。助手と相談した結果、今回はクラッチマスターシリンダーの交換のみとすることに決めました。
レリーズシリンダーとホースは目視で漏れが確認できなかったこともあり、今回は温存。いずれ要観察です。気持ちを切り替えて、後半戦に入ります。
※正直なところ後半戦は作業に必死で写真・動画を撮る余裕がありませんでした。記録が少ない点はご容赦ください。
新マスターシリンダーの移植
取り付けの前に、助手からひとつ重要な助言をもらいました。クレビスの位置を旧マスターシリンダーに合わせておくことです。
クレビスとはマスターシリンダーのロッド先端にあるペダルとの連結部品。この位置が旧マスターと大きくずれていると、取り付け直後のクラッチのつながり位置も変わってしまいます。旧マスターを並べて比較しながらクレビスの位置を合わせておくことで、取り付け直後からだいたい同じ位置でつながるようになるはずです。

細かいところですが、後のエア抜き作業やタッチ確認がやりやすくなる大事な一手間。さすが助手、気が利いています。
もうひとつ、取り付け前にやっておくべき準備があります。ダクト類の取り外しです。
レリーズシリンダーは目視では辛うじて確認できますが、エア抜きバルブに手が届く距離ではありません。新マスターを取り付けてしまう前にダクト類を外しておくことで、エア抜きバルブにチューブを差し込めるようになります。後からでは取り回しが大変になるので、この順番が重要です。

石川指導医から届いたドナーのマスターシリンダーを取り付けていきます。外した順番の逆で組み付け。フランジをしっかり合わせてエンジンルーム側・室内側のナットを締め込みます。リンクピンを通してクリップを戻し、ペダルとの接続も完了。
続いてクラッチラインを接続します。フレアナットを手で締めてからスパナで本締め。リザーバタンクにクラッチフルードを満たします。直接リザーバタンクに直接注ぎ込むと周辺に垂らす恐れがあるのでペットボトルを切って即席漏斗を作り、慎重にクラッチフルードを注ぎ込み
移植完了。あとはエア抜きで回路に血を通わせるだけ——のはずでした。
術中トラブル:クラッチラインからの出血
レリーズシリンダーのエア抜きバルブにスパナを取り付け、チューブを接続します。リザーバタンクのフルードを切らさないよう注意しながら助手にクラッチペダルをポンピングしてもらいます。
順調にリザーブタンクのフルードが減っているなぁと思ったらフレアナットとパイプの間からフルードが出血しています。フレアナットの締め込みが甘かったようです。
オープンレンチでさらに締め込もうとしますが、これ以上やると六角を舐めてしまいそうです。ここで無理をするのは悪手。
緊急調達:フレアナットレンチ
再び助手の軽トラに乗せてもらい、STRAIGHTへ向かいます。フレアナット専用形状で舐めにくいフレアナットレンチを購入。
手術室に戻り、フレアナットレンチで締め込みにかかります。専用工具だけあって舐める心配は減りましたが、今度は微妙に回転角度が足りない。狭いエンジンルームの中でレンチを持ち替えながら少しずつ締め込んでいきます。
途中でレンチを落としたのに落ちてこない… 車体の外から手を伸ばしてエンジンルームを弄るけど発見できません。仕方ないのでジャッキアップして車体の下に潜り込みあちこちを弄りようやくスイングアームの上に乗っていたレンチを見つけました。そしてまた締める。悪戦苦闘しながら、なんとか締め込みました。
助手に再びポンピングしてもらうと出血がなくなったことを確認しました。
ひとつ反省点。今回はなんとかなりましたが、狭いエンジンルームでの作業にはラチェットタイプのフレアナットレンチの方が断然向いています。首振り機構があれば回転角度の問題も解消できる。次回作業時は必ず用意しておきます。
エア抜き:術後の回復処置
フレアナットからの出血もとまりいよいよエア抜きです。クラッチラインに混入したエアを抜き切ることで、タッチが戻ります。
- 助手にクラッチペダルをポンピングしてもらう
- ペダルを踏み込んだ状態でエア抜きバルブを緩める
- チューブに気泡混じりのクラッチフルードが出てくる
- バルブを締める→ペダルを戻す
- リザーバタンクのフルードがなくならないよう確認しながら繰り返す
リザーバタンクを空にしてしまうとエアを噛み直してしまうので、フルードの残量確認が地味に重要な工程です。補充しながら根気よく繰り返します。
最初は汚れたフルードが出てきますが次第にきれいなフルードが混ざって出てきます。完全に新しいフルードに入れ替わり、気泡もないことを確認してエア抜き完了です。実際に自分でクラッチのタッチを確認するとしっかりしたタッチが戻っていました。
エア抜き完了です。
術後処置と閉腹
エンジンルーム内に垂れてしまったクラッチフルードをパーツクリーナーでたっぷり洗い流し、丁寧に拭き取ります。クラッチフルードはゴムや塗装を侵すので、ここは丁寧に、しつこいくらいにやっておきます。
あとは外したものを順番に戻していきます。タワーバー、エアダクト、ダッシュボードパネル、そして重い運転席シート。シートベルトを忘れずに接続して、コネクターを戻して完了。
手術完了です。
麻酔覚醒:セリカさんが目を覚ます
バッテリーのマイナス端子を接続し、セリカさんを目覚めさせます。ビニールテープを外してしっかり接続。デジタル時計の時刻を合わせ直します。
エンジン始動。
クラッチを踏んでみます。特に重くなった、軽くなったという変化はありませんがつながる位置が若干奥になりました。ここは様子をみて後日調整することにしましょう。
術後経過と反省
朝8:00に開始して、手術が完全に終わったのは夕方でした。マスターシリンダーの摘出だけで4時間、その後もフレアナットの漏れ対応で工具を買いに行くなど、想定外の展開が続きました。助手がいなければ間違いなく終わっていませんでした。ポンピングはひとりでは無理だし、工具を買いに行く足もなかった。本当にありがとう。
そして石川指導医、術中コンサルトのおかげで室内側ナットの詰まりを突破できました。秋田からのリモートサポート、大変感謝しております。
まとめ:ST165クラッチマスターシリンダー交換のポイント
- 時間に余裕を持って臨む。マスターシリンダー単体でも半日覚悟
- 作業前にバッテリーのマイナス端子を外す(短絡防止)
- シートとダッシュボードパネルを外すと術野が格段に広がる
- 室内側ナットは6.35㎜のディープソケット+角度付きエクステンションが正解
- フレアナットの締め込みは最初からフレアナットレンチを使う。できればラチェットタイプ
- エア抜き中はリザーバタンクを空にしないよう注意
- クラッチフルードが垂れた箇所はパーツクリーナーで速やかに拭き取る
- 手元の明かりは複数用意。ヘッドライトタイプが特に有効
- 助手は必須。ひとりでは無理です
素人でもできます。工具と助手と、頼れる指導医さえいれば。
作業中に気づいた問題1:明かりの確保
手持ちの明かりはセリカさんに常備していたマップライト替わりのLEDライト1本のみ。これを口にくわえたり、助手に持ってもらったりしながらなんとか患部を照らしていました。手元が暗いと作業にならない。特に室内側のナット周辺は光が届きにくく、何度も手探りになりました。
老眼もあるのかもしれませんが、今回の作業で地味に困ったのが手元の明かりでした。
次回の作業に備えて、DAISOでLEDライトを買いあさりました。ヘッドライトタイプなら両手が使えるので特におすすめです。
作業中に気づいた問題2:明かりの確保
明かりと並んでもうひとつ困ったのが目のピント問題です。
近眼かつ老眼というやっかいな組み合わせで、奥まった場所を見るときは眼鏡が必要、近くの細かい作業は裸眼の方が見えるという状況。作業中に眼鏡のつけ外しを何度繰り返したかわかりません。片手がふさがる、落とす心配がある、地味にストレスが溜まる。
こういうときに欲しくなるのがXVisionのオートフォーカス眼鏡。手元から遠くまで自動でピントを合わせてくれるやつです。次回作業までに真剣に検討しています。



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